小川哲著 ゲームの王国。

おひさ。

自粛自粛のゴールデンウィーク終了。テレビやネットの中にはこの状況にうまく適応している人がたくさんいて、今だからこそ学ぼうとか、自分のやれることをみつけていこうだとかで、眩しい。眩しすぎて、自分が影の中にいるよう。

私は何をしているか。何もしていない私の周りで、老犬ちゃんが死にかけて復活したり、実家の父が死んだりした。夫はすぐ横で痛みと闘っている。流れの速い川に落っこちて、ひたすら流されているみたいな日々だ。

そんな中、小川哲著「ゲームの王国」上下、読了。カンボジアが舞台で過去と未来、史実をたっぷり含んだ(たぶん)フィクションである。

読み始めたら止まらない本を紹介しているサイトで、この小説が紹介されていたので手にした。濁流に流されながらも、息継ぎするように没頭できる世界が欲しかったからだ。結果、私は息継ぎに成功した。この本を開けば、すぐにカンボジアに飛べる。知らない国の悲惨な過去の只中に、あるいは天才と天才の対立に、はたまた風変わりな殺し屋の風変わりな理論に、輪ゴムや土と会話する人間に、独自の風習を大切にしている田舎町に魅了されて引きずり込まれる。

面白い映画を夢中になって観ているみたいだった、と書こうと思ったけれど違うな。これは小説で、自分が読み進めるから鮮明な絵が浮かべられたし入りこめたんだと思う。

ありがたかった。

こんな状況で本なんか読めない!という状況におられる方におすすめ。