点滴の管をなびかせ原チャリで。

夫が一時退院してきて6日目。熱も出さず、下痢もおさまり、順調に過ごしている。今日は通院日で、点滴バックを背負って原チャリで行った。原チャリ……。普通ならタクシーを使うところが原チャリで、というのが夫らしいがこちらは見送って無事に帰ってくるまでドキドキしている。なんせ普通の体の状態ではないのだから。

固形物を食べるのは医者からも止められているし、止められていなくても、癌が大きすぎて食道を通っていかないので無理なのだけれども、入院前には水分も、自分の唾すらも通っていかない状態からは、少し改善している実感があるらしい。なので、もちろん医者の許可があってのことだけれど、味噌汁の汁だけとか、飲むヨーグルトとかを、小さい湯のみに少しだけ入れて、それをちびりちびりと飲んだりしている。吐くこともない。口に入れたものが全て口から吐き戻される状態を見てきたので、これは本当にすごい前進なのだった。それでも喉を湿らす程度の量を超えると、もう飲みたくないというような感じらしい。こちらもあまり焦らず見守りたい。健康な時は、粉末だしのお世話になっていたけれど、今は煮干しとかつおぶしでおだしをとるなんてことをやっている俺を誰か褒めてくれないか。

回復のきざしも見えれば心配な部分もみえる。肝臓の数値が悪くなっている。怖いことを考えたらきりがないから考えないというのは二人とも同意見。

夫のおかげで私も早寝早起き生活だ。酒も飲まない。布団の中で一時間くらい本を読んで、楽しい妄想をしたらすとんと眠りに落ちてゆく。夫も、あまりテレビを観なくなった。二人で話をしながらそれぞれに作業しているのが楽しい時間。

私は今、間違いなく幸せだなあと噛みしめている。

けして強がりではない。